軽減される受信障害
2008/05/27
受信障害の種類と画面症状
放送所から発射された電波は、テレビのアンテナ端子に届くまでに、反射波などのさまざまな影響を受け、受信画質に劣化が生じます。
これを受信障害を呼んでいます。
受信障害で多い事例として、建造物によるしゃへい障害と反射障害、ブースターの異常発振などによるビート障害、送配電線などからのパルスノイズ障害などがあります。
アナログ放送では、ゴースト障害などの受信障害を受けて放送を充分楽しめない受信状況下にあっても、デジタル放送では、良好に受信できる場合が多くなることが受信障害の比較実験で確認されています。

受信障害の画面症状として、アナログ放送では、受信障害の種類により、画面症状はさまざまですが、デジタル放送では、受信障害がひどい場合に、ブロック状のノイズが現れたり、画面が静止(フリーズ)したり、さらにひどいときには受信不能となります。
このことから、デジタル放送では、画面症状からだけでは、障害原因を見分けることが難しいと言えます。
受信障害に対する改善効果
受信障害の程度は、希望波を妨害波の強さの比(DU比)で表すことができます。NHKでは、いくつかの受信障害について、実際のサービスエリアでの状況を想定し、デジタル放送が受信できなくなる寸前のDU比をアナログ放送の受信画質が評価3(5段階評価法で『妨害が気になるがじゃまにならない』)となるDU比の関係を実験により求めました。その時のDU比の差(改善効果)を表に示します。

表に示した値は、希望波のレベルが充分に強い地域での改善効果の程度を示したもので、希望波レベルが弱い弱電界地域などでは改善効果が少なくなります。
今後、地上デジタル放送の開始を受け、多様な受信環境での実証実験等により、これらのデータの蓄積をさらに重ねてゆくこととしています。
デジタル放送が受信障害に対する改善効果が大きい理由として、次の技術的特徴が挙げられます。
- マルチパルス妨害に強くするため、ガードインターバルを充分長くしています。
- RS符号、畳み込み符号の2重の誤り訂正方式を採用し、信号の復元性を強くしています。
- インターリーブによりデータの誤りが分散され、誤り訂正が効果的に働きます。
- UHF帯の周波数の使用するため、電波の反射率や妨害源となるパルスノイズのエネルギーが低くなります。
建造物による障害
アンテナで受信する電波は、送信所から直接到来する電波(希望波)と周辺の建造物などに反射して到来する複数の電波(反射波)の合成になります。
図のように新設ビルが建設されると受信者Aでは希望波がしゃへいされ、周辺の既設建造物からの反射波とDU比がちいさくなるため障害が発生します。
これを「しゃへい障害」と呼んでいます。
一方、受信者Bでは新設ビルからの反射波が到来し、DU比が小さくなるために障害が発生します。これを「反射障害」と呼んでいます。
このとき、アナログ放送ではゴースト症状になりますが、デジタル放送ではDU比が極端に劣化した場合にブロック状のノイズが生じたり、画面がフリーズしたりします。

デジタル放送が、マルチパス妨害の影響を受けると、図に示すように、OFSM波を構成する搬送波レベルが乱れた状態になります。このときレベル低下した搬送波部分のビット誤り率が増加し、全体のビット誤り率は増加することになりますが、2章-5,6で述べたように、インターリーブなどの技術により誤り訂正が効果的に働き、マルチパス妨害を大幅に改善できます。
したがって、一般的にはデジタル放送の受信妨害範囲は、アナログ放送に比べ小さくなります。

2章-9で述べたように、デジタル放送を安定に受信するにはさまざまなノイズ環境の中でエラーフリーとなる電界強度が必要となります。
図のように高いビルのしゃへいなどで所要の電界が得られない場合は、受信不能となる障害地域が発生します。デジタル放送が受信障害に強いといっても、弱電界地域では強電界地域に比べて生涯範囲が広がる場合もあります。

ビート障害
アナログ放送で事例の多い障害として、ビート障害があります。
ビート障害は、ブースターの取付け不良などによる異常発振(ブースター発振)、無線局、パソコンなどの電子機器類などが原因となり発生します。
また、受信しているテレビ電波に他の放送局と同じチャンネルのテレビ電波が混入(同一チャンエンル混信)したときにも発生します。
これらの障害は、障害源によって接続時間や画面症状が異なるのが特徴で、アナログ放送の場合、同一チャンネル混信では規則的な縞模様になり、ブースター発振などの不安定な妨害源では不規則な縞模様になります。
デジタル放送ではガードインターバル、インターリーブなどの技術を採用していいるため、アナログ放送に比べて、先の実験結果では強電界下のDU比で約25dBと大幅な改善効果があります。

パルスノイズ障害
パルスノイズ障害は、電気機器や送船電線から発生する雑音障害で、アナログ放送では、点々上のパルスノイズ(メダカノイズともいう)の画面症状になります。
パルスノイズ障害で最も多い事例は、サーモスタットなどの電気機器や、送配電線設備からの放電(火花放電)によるものです。

送配電線からの火花放電は、温度や機械的振動により状況が変化する性質があり、パルスノイズ障害は乾燥時期や風の強いときなどに多く発生します。
この障害は、VHF帯で多く発生し、周波数が高くなるほど少なくなります。
デジタル放送では、UHF帯の周波数を使用することや、インターリーブなどの技術を採用しているため、アナログ放送に比べて、先の実験結果では強電界下のDU比で約14dBの改善効果があります。
その他の障害
フラッター障害
アナログ放送では、空港の近くや飛行機の航路にあたっている地域で、飛行機の運航に応じてテレビ画面が揺れ、コントラストが変動したり、ゴーストが現れたりすることがあります。この現象をフラッター現象といいます。
フラッター現象は飛行機などに電波が反射して、飛行機の移動に伴い反射波の強度および位相が変動するために、受信する電波のDU比が変化することにより
発生します。

フラッター障害は、飛行機によるもののほかに、ビル建設時の屋上に設置される大型クレーンが移動する場合や、送電線が風に揺れる場合にも発生します。
また高架道路などで走行する車などに電波が遮られて発生することもあります。
デジタル放送では、飛行機による反射波の遅延時間がガードインターバル内にほとんどあてはまるため、フラッター障害の影響は少なくなります。
また、UHF帯の電波では反射波の指向性および、受信アンテナの指向特性もシャープなため、影響を受ける時間が短くなり障害の発生は極めて少なくなるものと思われます。
スポラディックE層による外国電波の混信
アナログ放送のVHF帯の電波では、毎年、4-8月ごろに発生する電離層(スポラディックE層)により近隣諸国の電波が日本に到来し、混信障害が発生することがあります。これをEスポ混信障害と言います。
VHF帯の電波は、通常100km程度しか伝搬しませんが、スポラシックE章が発生しますと、この電離層に電波が反射して1,000~2,000kmの遠距離まで、異常電搬するため、混信障害が発生するものです。
混信の症状は、ビート障害の症状や色がつかなくなったり、音声に外国語がまざったり、音声が歪んだりします。
デジタル放送にしようするUHF帯の電波は、VHF帯の電波と異なり、電離層を突き抜けるため、デジタル放送では、スポラディックE層による外国電波の混信障害はなくなります。

出所:知っておきたい地上デジタル放送(NHK出版)





























